高山市制度融資預託金と予算及びその執行率
地方創成先行型での事業との関連で考えるA平成26年度実績値確定後の数値
H27.06.08:中田清介

制度融資実績(千円) H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
小口融資 1,489,260 1,178,400 829,050 963,200 1,020,310 936,250 1,025,500
経営安定特別融資 2,891,470 1,201,000 732,450 1,162,860 1,227,390 674,900 531,400
創業支援金融資 55,100 43,500 63,900 28,500 38,400 2,700 39,180
勤労者生活安定資金 194,239 200,570 209,920 128,070 122,460 125,440 69,370
勤労者住宅資金融資 237,740 225,380 180,550 64,600 0 23,000 0
合 計 4,867,809 2,848,850 2,015,870 2,347,230 2,408,560 1,762,290 1,665,450
 商工課主管の高山市制度融資には主なものとして上記5つのものがあります。その他時々の社会経済状況から、例えば先の東北大震災後の資金需要にこたえるための「経営安定特別融資震災枠」といったようなものもありました。しかし主な制度としてはこの5本ですのでこれらの推移を見ていただきます。
 これらの融資は県保証協会等への預託金制度で運営されるもので、高山市予算に計上された金額の範囲で、その5倍までの融資が実行できる制度となっています。(このほか市の直接貸付制度がありますが、H27年度からは「伝統的工芸品産業振興貸付金」のみとなります。)
 こうした中小企業向け制度融資の貸出実績を見ると、その時々の資金需要の推移を検証することができます。H20年度はいわゆるH19年のリーマンショック後の経済不安からくる、様々な資金需要が旺盛であった年です。この年の融資は金融機関が有利な制度融資として経営安定特別融資を勧め、1千万規模での融資に利用した姿もうかがえた年でした。また東北大震災後にも一つの山が窺われます。制度融資全体で見ると勤労者住宅資金融資の実績がこのところ止まっていること、経営安定特別融資が一服したという姿が見て取れます。

制度融資全体 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
融資実績 4,867,809 2,848,850 2,015,870 2,347,230 2,408,560 1,762,290 1,665,450
予算 2,035,000 2,035,000 2,762,000 2,535,000 1,984,000 1,840,000 1,800,000
融資枠 10,175,000 10,175,000 13,810,000 12,675,000 9,920,000 9,200,000 9,000,000
融資実績率 0.48 0.28 0.15 0.19 0.24 0.19 0.19
 こちらは5本の制度融資について、予算規模と融資枠からみた動向です。融資実績率は融資枠の何割が実際に融資されたかの数値ですが、H20で48%となっていますがそれ以外ではH21の28%が目立つくらいであとは10%台で推移しています。
融資実績と新年度予算の関係
 次に企業向けの3つの制度融資について融資実績率と次年度予算並びに融資枠の関係を見ていただきます。小口融資と経営安定資金特別融資については、H24年度予算から予算規模の縮小が図られています。これはH23年実績でも融資実績率は低く、預託金予算の計上に当たっては金融機関等との協議等を通じてその適正化を図り、他の政策経費に振り向けられる環境にあるという状況を予算審議の中で指摘しました。
商工課はそれ以後見直しを行い、小口融資ではそれ以後H24.25.26と融資実績率は30%台に張り付いています。H26年度は%が実積率です。そうした点を加味してH27年度予算では5億円を計上しています。
@高山市小規模企業融資(小口融資といわれているものです)
小口融資 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
予算 820,000 1,200,000 900,000 800,000 600,000 500,000 520,000 500,000
融資実績 1,489,260 1,178,400 829,050 963,200 1,020,310 936,250 1,025,500
融資枠 4,100,000 6,000,000 4,500,000 4,000,000 3,000,000 2,500,000 2,600,000 2,500,000
融資実績率 0.36 0.20 0.18 0.24 0.34 0.37 0.39
A経営安定資金特別融資
 経営安定資金特別融資では導入趣旨がリーマンショック後の経営環境のテコ入れと金融機関の厳しい経営環境から導入された背景を持ちますので、H20年度では大きな実績を残しています。またそうした経営環境を配慮してH23年度までは予算も融資枠もたっぷりと確保していたと言えます。こちらの方もH24から予算規模を縮小してきた姿を見ることができます。H26での実績率は0.17ですので、H27年度予算では6億円を計上しています。

経営安定特別資金融資 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
予算 800,000 900,000 800,000 900,000 640,000 660,000 630,000 600,000
融資実績 2,891,470 1,201,000 732,450 1,162,860 1,227,390 674,900 531,400
融資枠 4,000,000 4,500,000 4,000,000 4,500,000 3,200,000 3,300,000 3,150,000 3,000,000
融資実績率 0.72 0.27 0.18 0.26 0.38 0.20 0.17
B創業支援融資
 こちらは創業支援資金融資です。もともと予算額が小さく融資枠も小さかったので融資実績率は高めに推移していました。その為これについてはH23から予算額を増加してこのところH24,25,26では安定した予算額、融資枠となっています。H27度予算では前年並みの額を確保しています。
 しかしこちらの融資については上の2つの融資とは明らかに環境が異なります。困ったから借りるというよりは未来への投資を意味する創業資金です。その為あまり大きな額での実績は少なく、確実なアドバイス環境が整わないとH25のように融資件数が落ち込むといった事態にもなります。ワンストップでの相談業務相談窓口の必要性が言われる所以です。
そうした点で注目されてるのが、創業支援資金融資実績です。
創業・起業のチャンスを活かすまちづくりは、若者定着への道でもあり、高山市においても力を入れていかなければならない部門です。先日読んだ資料では、地方都市にとってコンパクトな街づくりに取り組むとともに、その周辺に飲食を中心とした若者の創業・起業でまちを活性化するしかないと指摘されていました。又ある人は地方都市にとって若者の職種は限られており、ジョブ型社員こそ望まれる職種だとも指摘されていました。
 高山市は昨年6月に創業支援事業計画の認定申請を国に提出し、特定創業支援に位置付けているセミナーを実施しています。これは高山市、高山商工会議所、市内3商工会の連携事業として実施されています。
H26年度実績は受講者数31名、創業者数7名(22.58%の操業率)です。
特定創業支援事業では100万円の支援金が創業に際して交付されますが、これからこうした面で創業が盛んになれば創業支援融資事業の資金需要も増えるのではないかと考えます。
創業支援資金融資 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
融資実績 55,100 43,500 63,900 28,500 38,400 2,700 39,180
予算 15,000 22,000 22,000 35,000 34,000 30,000 30,000
融資枠 75,000 110,000 110,000 175,000 170,000 150,000 150,000
融資実績率 0.73 0.40 0.58 0.16 0.23 0.02 0.26
今回の地域住民生活等緊急支援交付金事業(地方創成先行型)との関連で考える
 今回の国の12月補正による地方創成先行型予算に含まれた事業のうち、高山市では「特定創業支援事業費2000万円、若者定住促進事業費1700万円を3月議会初日に上程し可決しました。
 特定創業支援事業は創業セミナー受講修了者に100万円を支援する事業。若者定住促進事業は、Uターン就職者に10万円を奨励金として渡す事業です。こうした支援金は融資環境とは異なりますが、「まち・ひと・しごと」で地方創成に旗を振る国の方針の一つといえます。
 今回の地方創成先行型での補正には、子育て住環境整備事業補助金2000万円も盛り込まれています。これは2世帯居住等のリホームには上限100万円、工事費の1/2を補助するものもあります。また、農業後継者支援で認定を受けた農業後継者、いわゆる親元での就農後継者に100万円を補助するというものもあります。その他結婚支援やカード決済普及、バリアフリー観光推進策等もありますが、人に対する補助・支援金等が手厚く盛り込まれています。
 そもそもこうした事業は、次年度に入ってから策定を求められている「地方版総合戦略」の策定が前提の事業であり、そうした中で5年間の事業を検証すると国はいっており、その成果を求めてくるという制度設計です。そうすると高山市はそうした総合戦略を策定前に事業を確定し、その事業量を見込みで立案しているといった形にもなります。国が今後の消費増税をにらんで冷え込んでいる地方経済のテコ入れに走る中で、様々な事業を提案するという上からの事業提案に食いついた形です。
 特に問題なのは今回の事業は単年度単発で実施しては効果があげられないものが含まれています。継続してその環境を整えることでしか底上げにならない問題、それが「ひと・まち・ひと・仕事」創成なのではないかと考えます。今後今年度の事業規模が継続して保障されるのかという点では危うい選択でもあると考えられます。
 昨年私は「今まで行政に足りなかった点は政策立案に際しての経済効果のシミュレーションではないか」と指摘し、「行政はもっと税金の使い道を考える必要がある」とも指摘しましたが、今回の政策決定には少し疑問点が残ります。
 今回、制度融資の分析をする中で検証した「創業支援資金融資」の予算規模と、地方創成先行型ので取り上げた就労環境等の支援処置には大きな開きがあります。政策の継続性、創業環境の基盤を整えるための複合機な政策基盤、政策パッケージとしてのアピール度と「まち・ひと・しごと」創成にかける危機感・・・等の面で少し問題が残ると考えます。