名護市農産物6次産業化支援施設拠点整備事業 視察調査
1.視察期日 
平成26年2月20〜21日
2.視察先  
沖縄県名護市
3.視察項目 
名護市農産物6次産業化支援施設拠点整備事業
4.視察目的 
名護市における6次産業化支援施設拠点整備事業について、その背景を探ると共に、産業振興における行政の支援についての考え方、地方における観光と6次産業との融合の可能性、並びに今後の民間委託や公設民営での運営などについて考察する中で、高山市の今後の施策に活かすために調査する。
5.視察内容
 ア.事業概要
   @事業名 
名護市農産物6次産業化支援施設拠点整備事業(名護アグリパーク)
   A補助メニュー
    沖縄振興一括交付金事業 沖縄振興特別推進市町村交付金
   B事業年度
    平成24年度〜26年度
   C背景と目的
     名護市は昭和45年8月1日、名護町、羽地村、久志村、屋部村、屋我地村の5町村
    が合併し、県下9番目の市として誕生した。元々農業が盛んな地域として知られてい
    た。時代の変遷により農業粗生産額が約50億円減少するなど農業基盤や農業を取り
    巻く環境も変化してきた。
    そうした中農産物の加工施設等の要望も強まり、支所の活用等で対応してきていた。
    名護市の農家所得の減少、就農者数の減少、農産物全体の粗生産額の著しい低下
    等の課題解決を目的に、6次産業化と観光とを融合したアグリパークを整備する事とな
    った。

    名護アグリパークは農産物等の加工による高付加価値化を目指す各研究施設、販売
    施設、観光農園、地域農産物等が食べられるレストラン等の機能を併せ持ち、名護市
    の6次産業化推進の拠点施設とする方針。 拠点施設として整備することにより、観光
    客のニーズ(ここでしか食べられないもの、地元の食材を使った商品、おみやげ等)と
    地元のシーズ(地元の農産物得、それらを使った新しい商品等)をマッチングし、相乗
    効果を図る方針。
   D事業化計画
    平成24年度
     ・農産物加工研究施設整備 (487,156千円)
     ・道路、駐車場等の共用部分の整備  (204.838千円)
    平成25年度
     ・販売施設整備 (312,483千円)
     ・販売施設周辺環境整備  (154,838千円)
    平成26年度
     ・観光農園整備
     ・レストラン整備
     ・施設周辺整備
    それぞれ公募入札により業者を決定する。
   E事業の必要性
     名護市は沖縄本島北部(やんばる)地域に位置し、古くから農業が盛んな地域である。
     いる。
     ○農業粗生産額の推移
       平成3年度  95億円     大幅に減少
       平成14年度 55億円     北部振興策事業等で農家を支援
       平成18年度 64億円     まで回復
  現在も60億円程度で推移しているが、粗生産額は下げ止まりの傾向。
○課題
       名護市の就農者数は減少傾向にある。農家の高齢化や後継者不足は深刻であ
       る。
      ・その要因の一つに不安定な農業所得がある。
       農家は台風被害や市場価格の変動等により安定した収入があげられない。
      ・経営体力が不足している
       6次産業化により新商品開発や販路拡大に取り組み、安定した収入を確保したい
       が投資する経営体力が無い。
      ・これらの課題解決のために、6次産業化支援施設としてアグリパークを整備し課題
       解決へ。
      ・農産物の高付加価値化を図る施設と、誘客を担う観光農園を同時に整備すること
       により、
       ア.農家の安定経営 イ.農家所得の向上 ウ.就農人口の増加
へ繋げる。
     ○事業の運営と実施体制及び見通し
      ・観光客誘致のノウハウ、種々の施設管理運営能力を有する企業による指定管理
       を目指す。
      ・全施設整備後には年間30万人の誘客を目指す。
     ○既存施策等との関連
      ・農林水産省の6次産業化推進整備事業がある。
       その対象事業者は民間。地方自治体は対象となっていない。
      ・本事業は施設整備するだけの経営体力に乏しい農家等の6次産業化を支援する
       ことにより農家所得の向上を図ろうとするもの。
      ・その為、沖縄振興特別推進交付金事業により実施する。
     ○上位計画との整合性
      ・沖縄21世紀ビジョン
        ビジョンには次のような施策の展開が盛り込まれている。
        「優位性のある地域資源を持続的に活用するための、戦略的な地域密着産業の
        育成・支援を図る」
      ・第4次名護市総合計画
       「生産か環境や特産品を生かした農業の振興に向けて、時代のニーズに応 じた
       農家の持つ多様な可能性を生かした活動を促進する。」
   F施設整備の方針
    ・インキュベートA棟:野菜果物棟の加工研究施設
    ・インキュベートB棟:主に食肉加工関連施設(豚・山羊等)
    ・両棟とも器具設備は汎用性を持たせるため大きな設備とはしない。
    ・又部屋の間取りも小規模な部屋割りとした。
    ・あくまでインキュベート施設で一本立ちできたら独立してもらう。
    ・観光農園はプランター化して生産性を向上。農家への支援。
 イ.現況 先行する6次産業化実績
    ・全ての事業が一年遅れ。年度末へ向け追い込みの状況である。
    ・マンゴー、タンカンを事業化決定している。
  市内生産者のB級、C級品も調達し、生産を円滑化する計画。
    ・パパイヤの加工 地元では熟さないものを炒め物に使う習慣がある
  パパイヤ茶に加工
    ・小麦の作付けで現在年間900kgを生産 地元の蕎麦生産へ事業化
    ・「やんばるスパイス」と「やんばる畑人(ハタサー)プロジェクト」
やんばるスパイス700円 レトルト180グラム、630円
やんばるの農家が丹誠込めて栽培したウコン2種、ショウガ、島唐辛子の5種類のスパイスをブレンドしたスパイス。上品で繊細な風味と香りが特徴のスパイスです。
 やんばるスパイスを使用した第一号商品「やんばるスパイスカレー 」
 やんばる畑人プロジェクトとは、畑人(一次産業)と飲食店(二次、三次産業)が手を結び、 単独ではなく協同で地域資源を活用して、「日本一元気で豊かな地域やんばる」を創り出し、 そこから生まれた「やんばるは美味しい」を全国へ発信して、たくさんの方々に訪れてもらいたい、 やんばるのファンになっていただきたいという『食』から始まるプロジェクトです。
 ホームページは http://haruser.jp/ からご覧になれます。
 オンリーワンを目指す食の6次産業化プロジェクトです。又やんばる畑人プロジェクト応援店を組織し(やんばる倶楽部)、各応援店ではやんばるスパイスを使った料理等のメニュウを楽しむことが出来ます。
     
    ・公設民営方式での管理へ向け指定管理制度を導入しようとしている。
    ・「沖縄美ら島財団」は 財団法人 海洋博覧会記念公園管理財団が、「一般財団法人
      沖縄美ら島財団」として改編されたもの。
    ・当財団は調査研究・普及啓発・公園管理等を事業の柱としており、同県本部町と那
     覇市に分かれて所在する国営沖縄記念公園(旧称:国営沖縄海洋博覧会記念公園)
     の管理・運営を行っている。分かれて所在している同公園のうち、前者は亜熱帯性
     動植物に関する調査研究や教育等を目的とした沖縄美ら海水族館などを、後者は
     首里城に関する調査研究や展示施設などをそれぞれ擁している。
    ・美や海水族館を柱とする国営沖縄記念公園は年間300万人の誘客実績があり、観
     光客誘客やその施設管理運営の豊富な経験がある。
6.考察
 名護市は指定管理者制度を活用して農産物の6次産業化へのインキュベート施設を計画し建設中です。民間活力を利用した施設整備では公設民営化方式による瑞浪市の 「きなぁた瑞浪」を先般視察してきました。瑞浪では市民の出仕を受けた「みずなみアグリ株式会社」という組織を立ち上げ、その会社が運営を担当していますが、名護市では指定管理での運営を計画されていました。瑞浪の施設は農産物の直売所という設定ですが、名護市ではあくまでも6次産業育成のためのインキュベートとしての面が強く打ち出され、3年間の育成期間が設定されておりその加工施設と直売機能が一体として整備されるということでした。すでに先行して「やんばるスパイス」等の農産物加工の商品化の実績が動き出しています。
 しかし名護市でのプロジェクトの基本的考え方・産業振興戦略が印象的でした。それは「勝ち組を活用して産業として育てる」、「生産者と加工業者がネットワーク化しなければ原材料が確保できない」、「それが生産農家への支援に繋がる」と表現された産業支援のあり方であると感じました。
 ・6次産業化を目指して育成するということは、やる気のある人だけを支援して産業
  として根付かせることであり、儲けてもらうことではないか。
 ・全ての生産者が取り組まなくても良いということです。福祉事業ではないので全て
  の人を対象にしなければならないということではない。
 ・一部の人が事業に取り組み軌道に乗れば、他の生産者は原材料提供者としての
  位置づけで巻き込んでいける。それが6次産業化の取り組みではないか。
 ・特に農産物の生産という観点からいえば、商品化できる作物は地域に根付き作
  付け面積も拡大していく。
という解説でした。産業振興に対する割り切り方が、JA等とは一線を画す形で観光と融合する形での施策を実施する背景となっていると感じました。
これだけの改革志向のプロジェクトが組み立てられた要因としては、
 ・〈強くて元気な農業を〉という稲嶺市長の政策があり、6次産業プロジェクトチーム
  を庁内に設置した。
 ・PTでは名護市農業の現状分析で基礎調査を徹底して行った。
 ・今後の農業のあり方は、少ロットでも高付加価値化を目指す農業の展開と分析し
  結論づけた。
 ・その上で6次産業化推進事業等に取り組んだ。
 ・名護市地域再生計画にも6次産業化に向けた支援を位置づけている。
 ・地域に組織化の土壌がすでにあったこと。
 ・観光と農産物等を中心とした6次産業化の融合という面では、指定管理者として観
  光事業のノウハウを持った事業者の参加が確定していること。
 ・その美ら島財団は「美ら島ファーム」を設立し農業基盤を併せ持っている。
 ・国の沖縄振興のための八割補助メニュウがあったこと。
 ・プロジェクト担当となった職員が農務や商工面の経験者ではなかったこと。
 ・その為に産業基盤の基礎調査から分析して今後の将来像を組み立てたこと。
等々がこうした構想を実現に近づけた原動力ではなかったかと感じました。施設整備終了後の結果がどう出ているかを改めて見てみたいものです。
 こうした事例を見るにつけ、役所の産業支援とはどうあるべきかを改めて考えさせられました。事業化へのコンセプトを整え必要な基盤を整えたあとは、民間のノウハウを活かした運営にゆだねる、こうしたチームプレーが大切なのではないでしょうか。あくまで後方支援に徹し民間の経営ノウハウを活かす事業として根付かせる。そうした戦略が長い目で地域振興に繋がるとしています。
名護市と高山市の比較
  名護市 高山市
 面積  210.38 平方km  2,177.67平方km
  人口 60,231 92,157人
  世帯 26,052世帯 34,910世帯
  人口構成    
  ・年少人口比率
  ・生産年齢人口比率
  ・老年人口比率
17.3%
65.7%
17.0%
13.5%
56.4%
30.1%
  就業人口構成    
  ・第1次産業
  ・第2次産業
  ・第3次産業
1,662人
3,265人
16,982人
5,419人
11,130人
32,328人
  農業粗生産額 (約60億円) 199.9億円
  製造品出荷額 349.7億円 1,035.5億円
  卸売り業年間販売額 245.5億円 1,0744億円
  小売業年間販売額 527.9億円 1,1947億円
  歳出決算額
   同 人口一人当たり
309.9億円
51.2万円
472.5億円
51.1万円
  地方税収額
   同 人口一人当たり
57.4億円
9.5万円
137.8万円
14.9万円
  経常収支比率 88.3% 73.7
  実質収支比率 6.7% 9.6%
  公債費負担比率 10.2% 15.7%
  実質公債費比率 7.8% 8.4%
  将来負担比率 35.4%
  財政力指数 0.42 0.53
  自主財源比率 33.4% 41.3
  交付税依存度 26.5% 34.8%
  一人当たり地方債残高 39.1万円 45.4万円
  1000人当たり職員数 9.38人 8.6人

名護市の農家数の推移


 
  販売農家数 自給的農家数  総農家数
H17年度
H22年度
     919
     749
      289
      285
    1,208
    1,034
      農家とは:経営耕地面積10a以上又は農作物販売額年間15万円以上
      販売農家:経営耕地面積30a以上、農作物販売額年間50万円以上
      自給的農家:経営耕地面積30a未満、農作物販売額年間50万円未満
 
   名護市の農業産出額




 
    農業産出額
H3
H8
H13
H18
  954千万円
  710千万円
  616千万円
  647千万円
  データ:農水省生産農業所得統計
  H19以降は都道府県推計にあらた  められた。

 
「道の駅」許田 やんばる物産センター:地域の物産、特産品販売を視察 ぬちぐすい :やんばる畑人プロジェクト応援店でスパイスカレーを試食